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糖尿病と動脈硬化 |
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糖尿病は、「動脈硬化(どうみゃくこうか)」を発生させやすくします。
動脈硬化とは、血管(動脈)の内側(血液が流れる部分)の壁にコレステロールなどの脂質(脂肪)がこびりついてしまい、血管が狭くなり血流が悪くなったり、血管が硬くもろくなってしまう病気です。
動脈硬化になると、血液の流れが悪くなったり、動脈硬化により発症する病気である「脳梗塞(のうこうそく)」や「心筋梗塞(しんきんこうそく)」などの命を落としかねない病気になる可能性が高くなってしまいます。
動脈硬化は、加齢とともにだれでも発症しやすくなるのですが、糖尿病になると動脈硬化の発生確率や進行するスピードを上げてしまいます。
ですから、糖尿病の人は動脈硬化とそれにより発生する病気について十分注意する必要があります。
それでは、動脈硬化はどのような病気を発症させるのでしょうか?その辺について見ていきましょう。
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糖尿病と狭心症・心筋梗塞 |
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「狭心症(きょうしんしょう)」と「心筋梗塞(しんきんこうそく)」は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送っている「冠動脈(かんどうみゃく)」と呼ばれる血管に動脈硬化が発生することで起こる病気です。
狭心症と心筋梗塞は、動脈硬化により血液が流れにくくなるために、心臓の筋肉が酸素不足になることで起こるので、「虚血性心疾患(きょけつせい しんしっかん)」とも呼ばれます。
狭心症とは、動脈硬化が起こることで冠動脈の血液の流れる空間が狭くなってしまい、血液の流れが悪くなることで発症します。症状は、胸の急激な痛みや圧迫感です。この発作は
5〜10分ぐらいで治まります。
狭心症についてさらにくわしくは、「狭心症」のカテゴリの「狭心症とは?」のページからごらんください。
心筋梗塞とは、冠動脈に動脈硬化が起こることで、そこに血液の塊である「血栓(けっせん)」が出来て、その血栓が冠動脈をふさいで血液の流れを止めてしまうことで起こる病気です。
狭心症よりも強い痛みが発生して、痛みの続く時間も長いです。血流が止まってしまっているので、すぐに治療を受けないと心臓の細胞が壊死していき、死亡してしまうこともあります。
心筋梗塞についてさらにくわしくは、「心筋梗塞」のカテゴリの「心筋梗塞とは?@」のページからごらんください。
狭心症・心筋梗塞は、症状・発作として胸の「激しい痛み」という共通点があります。
ただ、糖尿病の人が狭心症・心筋梗塞になると、胸の痛みを感じないことがあります。
これは、糖尿病の合併症である、「糖尿病性神経障害」が原因です。
糖尿病性神経障害により、狭心症・心筋梗塞による痛みを感じなくなることで、病気の発見が遅れることがあります。発見が遅れるととても危険です。
また、糖尿病の人は動脈硬化の進行が速いために、「狭心症→心筋梗塞→心不全」と悪化しやすいという特徴があります。
ですから、糖尿病の人は少なくとも 1年に 1回は心臓の検査を受けることが大切です。
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糖尿病と脳梗塞 |
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脳梗塞(のうこうそく)とは、脳の血管が詰まって血流が止まってしまうことで起こる病気です。
脳梗塞になるパターンは 2つあって、脳内の血管が動脈硬化などにより詰まって血流が止まってしまうことで起こる「脳血栓症(のう けっせん しょう)」と、脳以外の場所でできた血栓が脳まで流れてきてつまってしまう「脳塞栓症(のう そくせん しょう)」があります。
脳梗塞のどちらのパターンも、動脈硬化などにより発生する血栓が関わっています。つまり、動脈硬化が起こりやすい糖尿病の方は脳梗塞にも注意が必要である、ということです。
脳梗塞になる前に起こる症状として、めまい、ろれつが回らない、体の片方だけがしびれる、片方の目が見えにくい、などの症状があらわれます。これらの症状は、血栓が一時的に脳の血管をふさいで血流が止まってしまっているために起こる症状で、「一過性脳虚血性発作(いっかせい のう きょけつせい ほっさ)」と呼ばれています。
これらの症状の後に、本格的な脳梗塞になる可能性が高いので、すぐに病院で診てもらう必要があります。
脳梗塞になると、意識を失い、半身麻痺(はんしんまひ)や失語症などの重い後遺症が残る可能性が高くなります。また、最悪の場合は死亡してしまうこともあります。
異常のように、脳梗塞はとても危険な病気です。糖尿病の人は、脳梗塞の原因となる動脈硬化になりやすいわけですから、脳梗塞になる危険も高くなるので、十分注意が必要です。
脳梗塞についてさらにくわしくは、「脳梗塞」のカテゴリの「脳梗塞とは?@」のページからごらんください。
「下肢閉塞性動脈硬化症(かし へいそくせい どうみゃくこうか しょう)」とは、足(下肢)の血管に動脈硬化が発生することで、足の血管が詰まってしまう病気です。
症状は、歩くと足が痛む、足が冷たくなる、足の脈拍がなくなる、などの症状があらわれます。
最初は、歩きにくいと感じる程度ですが、歩いているうちにふくらはぎなどがこわばって痛みを感じるようになります。症状の出始めのころは少し休むだけで痛みは消えますが、そのうち、少し歩くだけで痛みを感じるようになり、休みながらでないと歩けなくなります。
これを「間欠性跛行(かんけつせい はこう)」といいます。糖尿病性神経障害があると、痛みを感じにくくなる場合があります。
この病気は進行が速いので、糖尿病の人で歩いていて足の痛みなどの異常を感じたら、すぐに治療しましょう。放置してしまうと、そのうち足の先が壊疽(えそ)を起こしてしまうことがあります。壊疽とは、腐ってきてしまうことです。
足が壊疽を起こして、それがひどくなると、足を切断しなければならなくなることもあります。足のケガから壊疽が起こることもあるので、足を傷めないように注意しましょう。
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糖尿病と動脈硬化の予防 |
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糖尿病による動脈硬化により、様々な病気にならないためには、血糖コントロールや血圧をコントロールする治療などをしっかりと行っていきます。
また、塩分やコレステロール・動物性脂肪などをとりすぎないようにして、喫煙をしない、ストレスを解消する、疲労をためない、飲酒を控える、食物繊維を多くとる、などの日常生活にも注意し、動脈硬化の原因となる要素をなくしていくことも大切です。
それでは次のページでは、糖尿病の合併症である様々な感染症について見ていきましょう。
※次のページ「糖尿病と合併症H〜感染症」へ続く・・・・
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