成人T細胞白血病(ATL)とは、「ヒトT細胞白血病ウイルスT型(HTLV-T)」の感染により起こります。ウイルス感染により発病するところが、このがんが白血病や悪性リンパ腫と大きく違うところです。
この病気は悪性リンパ腫の一種なのですが、ほとんどが白血病化するので、成人T細胞白血病:ATL(成人T細胞白血病リンパ腫:ATLL))と呼ばれます。
ATL には、「くすぶり型」、「慢性型」、「リンパ腫型」、「急性型」、があります。リンパ腫型と急性型は、発症した後の平均余命が半年〜 1年です。
日本人の約120万人が、このウイルスに感染している(キャリア)とされています。感染している人のうち、発症する人の数は年間で約700人ぐらいです。西南日本の方に多く見られます。
病名に「成人」とつく理由は、ウイルスに感染しても症状が出る人のほとんどが40歳以上だからです。潜伏期間は数十年で、いちばん多くみられる年齢は60〜70歳です。
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ウイルスの感染経路 |
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「ヒトT細胞白血病ウイルスT型(HTLV-T)」の感染経路は、「母乳からの感染」、「性交渉」、「輸血」、の 3つがあります。中でも、母乳からの感染が大半を占めます。
母乳からの感染では、妊娠中のお母さんがこのウイルスを持っていると、産後の授乳などにより、赤ちゃんに感染する可能性があります。感染して症状が出るまで30〜70年ぐらいかかります。発症する確率は約 5%ぐらいです。
輸血による感染は、献血時に血液がウイルスに感染していないか検査するようになったので、現在ではなくなったと考えていいでしょう。
性行為による感染は、精子の中のHTLV-Tが原因となって感染します。ただ、症状が出るのはまれです。
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成人T細胞白血病の症状 |
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「ヒトT細胞白血病ウイルスT型(HTLV-T)」に感染して悪性化したT細胞(リンパ球の一種)が、血液やリンパ液によって、 骨髄や肝臓、 脾臓、消化管、 肺など全身の臓器に広がっていくことで、様々な症状が発症します。
ウイルスに感染して発病して起こる症状は、首・わきの下・足のつけ根などの「リンパ節のはれ」、「肝臓のはれ」、「脾臓(ひぞう)のはれ」、「皮膚の病変」、などが起こります。
また、血液中のカルシウム値が上昇(高カルシウム血症)することで、「全身の倦怠感(けんたいかん)」、「便秘」、「意識障害」、「不整脈」などが起こります。
また、免疫能低下により、日和見感染症(ひよりみ かんせんしょう)を高い頻度で合併してしまいます。
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成人T細胞白血病の検査 |
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検査は病院で血液検査を行います。ただ、在宅でも検査できる検査キットも販売されています。
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成人T細胞白血病の治療 |
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症状により、治療をしないで経過を観察、化学療法(抗がん剤治療)、骨髄移植、などがありますが、主に化学療法を行います。
感染した人に対する治療法はこれといってありません。しかし、約95%の人が一生発症することがありません。
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感染しないために・・・ |
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このウイルスへの感染は、母乳から感染することが多いので、ウイルスを持っている人(キャリア)は人工乳での保育がすすめられています。
性行為でもウイルスに感染する可能性もあるので、コンドームを使うことも予防として有効です。
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