※前のページ「糖尿病と合併症A〜合併症の原因」の続きです↓
|
糖尿病性神経障害とは? |
|
|
糖尿病性神経障害(とうにょうびょう せい しんけい しょうがい)とは、糖尿病の 3大合併症の 1つで、高血糖により「末梢神経(まっしょう しんけい)」に障害が起こる合併症です。糖尿病の合併症の中でも、比較的早い段階で発症する合併症です。
人間の神経は、脳と脊髄(せきずい)で構成される「中枢神経(ちゅうすう しんけい)」と、そこから枝分かれして全身のさまざまな場所へつながる「末梢神経(まっしょう しんけい)」に大きく分類することができます。
そのうちの「末梢神経」は、痛みや熱さ・冷たさなどを感じる「知覚神経(ちかく しんけい)」、手足の動きをつかさどる「運動神経」、内臓の働きや体温・発汗の調整やホルモンの分泌などを調整する「自律神経(じりつ しんけい)」、の 3つに分かれています。
糖尿病の合併症として神経が障害を受けるのは、末梢神経の細胞です。つまり、高血糖が、知覚神経・運動神経・自律神経に障害をあたえ、それらの神経が調整している体の機能が正常に働かなくなってしまい、「糖尿病性神経障害」のさまざまな症状が起こってしまうのです。
|
知覚神経・運動神経への障害 |
|
|
知覚神経と運動神経への障害は、糖尿病の早い段階で最もよく起こりやすいものです。
知覚神経の障害により起こる症状は、、手先や足先などにジンジンとした痛みや、チクチクと針を刺したような痛み、またはピリピリ・ビリビリとした電気が走るような痛みです。また、逆に痛みなどに対する感覚が鈍くなったり、無くなってしまうこともあります。
普通、これらの症状は、同じぐらいの時期に両方の足(手)に起こります。そして起きているときよりも睡眠中に起こりやすいという特徴があります。
運動神経の障害により起こる症状は、ふくらはぎの筋肉がつる(こむらがえり)があります。
筋肉がつるといっても神経障害によるものは、運動している時に起こるよりも家でくつろいでいるときや、夜寝ているときに突然起こるという特徴があります。
▼糖尿病による感覚・運動神経への障害により起こる症状 |
|
|
・手足のしびれ・痛み -
|
|
|
手先や足先などにジンジン、チクチク、ピリピリ・ビリビリとした痛みを感じる、手足が冷たく感じる |
|
|
|
・感覚が麻痺する -
|
|
|
痛みや、熱さ、冷たさを感じにくくなったり、感じなくなる |
|
|
|
・こむらがえり -
|
|
|
ふくらはぎの筋肉がつる、運動している時よりも寝ている時などに起こりやすい |
|
|
|
・顔面神経麻痺 -
|
|
|
顔の神経が麻痺することで、顔の筋肉に力が入らなくなる。そのため口元がゆがんだり、よだれがたれたり、うまく食べ物が食べられないなどになる |
|
|
|
・外眼筋麻痺 -
|
|
|
眼を動かす筋肉が麻痺することで、目が一つの方向へよるなどの症状が起こる |
|
|
|
自律神経への障害 |
|
|
自律神経とは、自分の意志で動かしたり止めたりできない体の動きをつかさどっている神経です。
例えば、心臓や胃・腸の動き、体温・血圧の調整、などは、自分が意識しなくても正常に働いているのが普通ですが、これは自律神経によるものです。
ですから、自律神経に障害が起こると、これらの動きや働きが異常になり、立ちくらみ、異常な汗、冷えやほてり、下痢・便秘、排便障害、排尿障害、勃起障害(インポテンツ)、などのいろいろな症状が起こります。
|
・発汗異常 -
|
|
|
暑くないのに異常な汗が出る。食事の時に、頭・顔・首・胸、などに多量の汗が出る。また、暑いのに汗が出ない。 |
|
|
|
・循環不全 -
|
|
|
血液の循環が悪くなることで、体にほてりや冷えを感じるようになる |
|
|
|
・胃腸障害 -
|
|
|
胃の動きが一定せず、胃の機能が低下することで、食べたものが胃を通過しにくくなり、食欲不振、むかつき、吐き気、が起こる |
|
|
|
・立ちくらみ・めまい -
|
|
|
血圧の調整がうまくできないことで、急に立ち上がったときに脳に一時的に血液が流れなくなり、立ちくらみやめまいが起こる(起立性低血圧) |
|
|
|
・便通障害 -
|
|
|
便秘や下痢になりやすくなりる、便秘や下痢を繰り返す、腹痛を感じることなく下痢をする |
|
|
|
・排尿障害 -
|
|
|
膀胱の障害により、膀胱に尿がたまっても尿意を感じないため尿が出なくなり、たまった尿のせいで下腹部がふくらむ(糖尿病性無力性膀胱)、もらしてしまったり(失禁)、残尿感がある、 |
|
|
|
神経障害の進行による怖い症状 |
|
|
糖尿病性神経障害が進行すると、神経線維(しんけいせんい)が傷つくことで、「神経麻痺(しんけいまひ)」となり、痛みを感じにくくなってしまいます。
痛みを感じにくくなると、ケガややけどなどに気づきにくくなるので、そのまま放置してしまい、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ:腐ってきてしまう)が起こってしまいます。
また、合併症が発症しているのに体の異常を感じることができないため、対処が遅れて合併症がさらに悪化してしまいます。
神経障害の悪化による症状は、他にも「無自覚性低血糖」や「無痛性心筋梗塞」などもあります。
「無自覚性低血糖(むじかくせい ていけっとう)」とは、症状を感じないまま、低血糖が進んでしまうもので、そのまま昏睡状態にまで進んで倒れてしまうこともある危険なものです。
神経障害により、血糖の変化にホルモン(グルカゴン)の分泌が反応できないために低血糖を起こしやすくなるので、昏睡状態(意識がなくなり倒れる)などの危険な状態になる可能性が高くなります。
「無痛性心筋梗塞(むつうせい しんきんこうそく)」とは、心臓の病気である「狭心症(きょうしんしょう)」、「心筋梗塞」の発症時の胸の痛みを感じないもので、ある日突然に大きな発作が起こったり、突然死してしまうこともあります。
|
糖尿病性神経障害の検査 |
|
|
糖尿病性神経障害の検査については、「糖尿病の検査と診断I〜神経障害を調べる検査」のページをご覧下さい。
|
糖尿病性神経障害の治療 |
|
|
糖尿病性神経障害の治療は、どのような症状でも「血糖コントロール」を行うことが基本となります。
血糖コントロールを行うことで、初期の神経障害であれば症状を無くすこともできます。
また、症状が強い場合は、その症状に合った専門医による治療も同時に行われます。
それでは次のページでは、について見ていきましょう。
※次のページ「糖尿病と合併症C〜糖尿病性網膜症T」へ続く・・・・
|