※前のページ「糖尿病と合併症D〜糖尿病性網膜症U」の続きです↓
|
糖尿病性腎症とは? |
|
|
「糖尿病性腎症(とうにょうびょう せい じんしょう)」とは、高血糖により腎臓の細い血管(細小血管:さいしょう けっかん)がおかされることで、腎臓の機能が低下してしまい、様々な障害が起こる合併症です。
糖尿病性腎症は、除々に長い時間をかけて進行していきます。治療をしないで放置してしまうと、糖尿病になってから約30年ぐらいで、腎臓の機能が停止してしまう「腎不全(じんふぜん)」になり、命にもかかわってきます。
糖尿病性腎症がさらに悪化すると、最後には「人工透析(じんこう とうせき)」をおこなわなければならなくなります。
人工透析とは、機能しない腎臓の代わりに機械により血液の老廃物などを濾過(ろか)する治療で、1週間に3〜4回、そして1回の治療時間が4〜5時間かかる負担の大きいものです。人工透析を受けている人の約40%が、糖尿病が原因であるとされています。
人工透析による治療は一生続ける必要があります。人工透析を行いながら日常生活をしていくことは、かなりの大変です。また、患者さんの家族にも大きな負担となります。
ただ、糖尿病性腎症は早期の段階で治療すれば、それ以上進行しないようにすることができます。ですから、自分が糖尿病であることがわかったら、すぐにしっかり治療をおこなって血糖コントロールをしていくことが、合併症の発症や進行をくい止めることになるのです。
|
腎臓の機能とは? |
|
|
腎臓は、血液の中の老廃物を濾過(ろか)してきれいにして、その老廃物を尿の中に出し、アミノ酸などの必要な成分を血液に再吸収させるという働きをしています。
ろ過する部分は、腎臓の「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる部分です。糸球体は、たくさんの細小血管(毛細血管)が集まっている気管です。例えるなら、糸を丸めて玉にしたような感じです。
この糸球体の細小血管の集まりが、血液をろ過して血液の中の老廃物などのいろいろな成分を分けて、尿の中へと排出するわけです。
ただ、高血糖の状態が長く続くと、糸球体の細小血管がかたくなり、さらに傷むので、糸球体のろ過する機能が低下してしまいます。
そうなると、十分なろ過ができずに老廃物が体内へたまったり、本来はろ過されないはずのタンパク質などの成分がたくさん尿の中に排出されるようになってしまいます。
そして、さらに悪化すると、糸球体のろ過機能は完全に停止してしまうのです。
|
糖尿病性腎症の検査 |
|
|
糖尿病性腎症の症状は、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。腎不全(じんふぜん)などの重い状態になれば腎臓が痛むなどの症状が出てきますが、それまで悪化させては回復できなくなります。
ですから、早い段階で腎症を発見するために、定期的な尿検査や腎臓の機能を調べる検査を受けることが必要です。
腎臓に障害があれば尿にタンパクが混じるのですが、尿に試験紙を浸して調べる尿タンパク検査で、腎症により陽性(異常がある)が出るころには、病状がある程度進行してしまっている状態となります。つまり、試験紙の検査では腎症の早期発見ができません。
ですから、もっと腎症の初期の段階で異常が発見できる検査である、「尿中微量アルブミン検査(にょうちゅう びりょう あるぶみん けんさ)」を行います。
尿中微量アルブミン検査とは、尿の中に「アルブミン」と呼ばれるタンパク質が混じっているかどうかを調べることができる検査です。
糖尿病性腎症が起こると、アルブミンが尿に出てくるのですが、腎症の初期では、このアルブミンはとても微量な量しか尿に出てきません。尿中微量アルブミン検査では、この微量のアルブミンを見つけ出すことができるので、腎症を早期で発見することができます。
また、腎症の進行の程度により、血液の中の老廃物の濃度を調べる検査や、糸球体のろ過機能を調べる検査なども定期的に行います。
それでは次のページでは、糖尿病性腎症の進行段階について見ていきましょう。
※次のページ「糖尿病と合併症F〜糖尿病性腎症U」へ続く・・・・
|