前のページでは、尿失禁についてと尿失禁には様々な種類があることを解説しました。このページでは尿失禁の種類それぞれについて解説していきます。
腹圧性尿失禁とは、40歳を超えた中年以降の女性、特に出産経験の多い女性によく見られる尿失禁で、起こる年齢などに違いはあるものの、ほどんどの女性に見られるようになります。
重いものを持ち上げたりなどの運動時、せき・くしゃみ、大きな声を出す、笑う、などお腹に急に力(圧迫)が加わることで起こります。尿が漏れる量や程度は人により違いがあります。
腹圧性尿失禁の原因は、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)と呼ばれる、膀胱を支えて尿道を締めている筋肉がゆるんで弱くなってしまったためです。
骨盤底筋群のゆるみが進んでしまうと、膀胱瘤(ぼうこうりゅう)、子宮脱(しきゅうだつ)、直腸脱などを合併してしまうこともあります。
腹圧性尿失禁は、肥満していると起こりやすくなります。症状が重くなると、少し動こうとしただけ尿が漏れてしまうようになることもあります。
腹圧性尿失禁の治療は、内臓を支え、排尿のコントロールに関わる骨盤底筋群のしなやかさや張りを取り戻すことが大切です。
そのために、骨盤底筋体操を行います。骨盤底筋体操はとても効果が期待できますが、長時間続ける必要があります。尿失禁が軽くなり始めるまでに、2週間ぐらい、改善するには
3〜4ヶ月ぐらいかかるのが普通です。
特別な支持器具(イントロール)を利用する場合もあります。これは、骨盤底筋群の張りがなくなり膀胱の位置が下がってきてしまっているときに、膀胱を正しい位置に戻して支えるためのものです。
イントロールは、起床時に膣内に挿入して、寝るときに外すというように使います。ただ、支持器具により弱ってしまった骨盤底筋群を改善することはできないので、骨盤底筋体操も行うことが大切です。
手術によって膀胱を支える、TVT手術を行う場合もあります。さらに症状に応じて、排尿習慣訓練、ペースト注入、薬物などの治療を行うこともあります。
女性に腹圧性尿失禁が多い理由は、排尿を止める役割をする尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)が男性に比べて弱く、さらに何度か出産を経験するうちに骨盤の下部にあって内臓を支えている骨盤底筋群も弱くなってくるからです。
さらに、年齢とともに膀胱から出ている尿道の角度が鈍角化することで、膀胱内の尿の重さが尿道の方向へと受けやすくなっていくことも影響しています。
それでは次のページでは、「切迫性尿失禁」について詳しく見てきましょう。 |